たまごのような恋 殻を割ったそのとき
 支樹が少し心配そうな目で見る。そんなに怯えた顔をしていたのだろうか。兄もテレビから視線を外して、ちらりとこちらを見た。

「大丈夫だよ」

 笑顔で言ったのだが、やはり少し窓の外が気になる。たまに稲光が光っているから。
 支樹は立ち上がって何をするのかと思いきや、カーテンを閉めた。もう雷は見えない。こういうところは優しいと思う。

「あ、ありがと」
「いえいえ、どういたしまして」

 彼は少し笑ってそう言った。

「支樹はなにか苦手なものはある?」
「うーん、何だろう?」

 少し考えていたが、あまり思い浮かばないみたいだ。ジェットコースターとか高いとことかも平気そう。

「あんまりないみたいだね」
「そうだな。お前は他にもありそうだな。苦手なもの」

 実はつい最近、家にゴキブリが出たとき、兄に助けを求めた。たまたま家に兄がいたからよかったものの、一人だったら大騒ぎしているところだった。

「あのさ、映画館に行かないか?明日」
「映画?」
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