たまごのような恋 殻を割ったそのとき
 急に話が変わったので、少し戸惑った。

「ちなみに何の映画?」
「恋愛物。お前、好きだろ?」

 私はゆっくりと頷いた。彼は鞄から二枚の映画のチケットを出した。ラブストーリーの映画。
 明日は休みだし、何も予定が無いので断る必要なんてない。

「うん。行く」
「支樹、俺の分はあるか?」
「ないよ、あったとしても明日はバイトが入っているだろう」

 そうきくと、兄は少し残念そうな顔をしていた。

「明日は十時半から始まるから遅れるなよ」
「あの、遅れるなって待ち合わせ場所はどこに?」
「十時に駅前。以上」

 支樹は早口でそういった。わたしはきちんと返事をしなかったが、メモをとった。
 久しぶりの映画なのでとても楽しみにしていた。
 翌朝 いつもなら晴れていて気持ちいいのだが、今日も雨が降り続いていた。昨日よりかはだいぶましにはなっていた。部屋を出て、キッチンへ行くと、兄が座っていた。

「おはよう」

 私達はお互いに挨拶をした。

「朝ごはん何食べる?」
「俺はいい、今はあんま腹へってない」
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