たまごのような恋 殻を割ったそのとき
 重い足を何とか動かして歩いた。
 家に帰って、私はパソコンの画面を凝視する。DVDの中身は支樹の言葉どおり結婚式のもので、主役は幸せいっぱいの笑みを浮かべていた。結婚式は女の子にとって、最大の憧れのものであるけれど、私にとってそれはまだよくわからないものであった。一通り流したあと、パソコンから抜いて、DVDを支樹に渡した。

「どうだった?」
「うん、とても綺麗だった」

 ウェディングドレスも華やかだったが、私は表情に魅力を感じた。人が幸せだと思うときはあのようになるのだと納得していた。

「今日はなかなかいいものを見ることができたな」
「そうだね」

 こういうものは滅多に見ることができないから。

「お前、なんか誤解していないか?」
「何?」

 支樹がぐっと顔を近づけて、両手で私の顔を挟んだ後、優しくゆったりとした声で囁いてきた。

「今日琴音が取り乱した表情」
「ひっ!」

 すっかり忘れていた。結構距離があったけど、この人は私のことをしっかりと見ていた。

「ったく、なんて声を上げているのさ・・・・・・」

 支樹が呆れ顔でこっちを見ていると、兄がちょうど部屋に入ってきたので、その広い背に隠れた。
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