ペテン死のオーケストラ
ベッドに戻り、横になったマートルに産婆は話しかけてきます。

「マートルさん、悪阻がひどいみたいだけど病院にちゃんと通っていましたか?」

「いいえ。そんな暇なんかなかったわ。毎日、毎日、動き回ってたもの」

「やっぱり。通りで体が弱っているわけね。マートルさん、元気な赤ちゃんを産みたいなら休みなさいね。ご主人に協力を求めるべきですよ」

「主人は…、主人は忙しい人なの。だから、無理よ」

産婆はマートルの返答に違和感を感じます。

「いくら忙しいと言っても、少しくらいは協力してもらわないと…。私から話しをしますわ。ご主人の連絡先を教えて下さい」

「駄目!主人には言わないで!」

「落ち着いて。どうしたというのです?一人じゃ辛いだけよ。二人で協力して赤ちゃんを育てないといけないでしょ?」

「大丈夫。私は一人で大丈夫よ!立派な赤ちゃんを産んでみせるわ」

マートルな反応に、産婆は気づきます。

この赤ちゃんは、誰からも祝福をされていないと。

まだ、若いマートルを見て全てが分かった気持ちになりました。

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