ペテン死のオーケストラ
新しい自分達だけの家は快適です。

「もう少しよ!もう少し頑張れば、楽になれる」

マートルは自分に言い聞かせます。

マルメロのためにも、お金を稼がなくてはいけません。

毎日、必死で働きました。

少しずつですが、心にも余裕がでてきます。

しかし、生活に関しては余裕とは言えません。

毎日ギリギリの生活であることには変わりがないのです。


ある日の仕事帰り、へとへとになったマートルは、衝撃的な物を見つけます。

金色に光る容器に入った、深紅の口紅。

以前、一目惚れした口紅が目に飛び込んできたのです。

「嘘でしょ!まさか、あの口紅!?」

マートルは疲れも吹き飛びます。
口紅をジーッと見つめ、ため息がもれました。

「あの口紅だわ。あぁ、やっぱり綺麗。素敵…」

マートルは、口紅に魅入ります。

「欲しいけど…、高すぎるわ」

諦めて帰ろうと思うのですが、体が動きません。
口紅が欲しくて仕方なくなります。

「これは運命の出会いかも」

徐々にマートルの心は揺らぎ始めます。
高い値段ですが、買えないことはないのです。
毎日しっかり働けば、すぐに稼げる金額。
しかし、マートルにとっては大きな金額です。

長い時間、悩み続けます。

「いつも、頑張ってる自分へのご褒美よ!」


マートルは思い切って、口紅を買うことにしました。
買うと決めたら心が軽くなり、体の疲れも吹っ飛ぶから不思議です。

「贅沢しちゃった。でも、たまには良いわよね!」

マートルは綺麗に包装された口紅を見つめ笑顔がこぼれます。

「特別な日だけの物よ。さぁ!明日からは頑張らないと!」

マートルは、口紅を買った事で元気がでました。

疲れた体も軽く感じ、とても幸せを感じていたのです。

それからは、毎日、毎日、取り戻すかのように必死で働きます。
辛くても、大切な口紅を見たら頑張れるのです。
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