ペテン死のオーケストラ
マルメロの先制攻撃に男性は怯んでしまいました。

母親は男性に甘ったるい声で訴えます。

「しっかりしてよぉ、貴方だけが頼りなの。私、いつもマルメロに虐められているの…。よく、分かったでしょう?」

男性はハッとします。
しかし、マルメロの方が先に口を開きました。

「まぁ!お母様ったら、生ゴミに話しかけるだなんて!あら?お母様と違う。よく見たら生ゴミが二つだわ。通りで、酷く臭いと思いましたわぁ」

母親はカッとなり怒鳴りました。

「私が生ゴミ!?ふざけないでよ!生ゴミは貴女よ!」

「まぁ、生ゴミが喋ってる。世の中、不思議な事ばかりですこと。」

「マルメロ!いい加減にしなさい!まともに話しもできないわ!」

「私は、人間ですもの。生ゴミと話すことなんてありません。どうぞ、生ゴミ同士、臭い会話を楽しんでください」

マルメロは楽しくて仕方ありません。
口喧嘩が大好きになっていたからです。
それだけ、口が達者になっていました。

母親は涙を浮かべています。
男性がそれに気づき、やっとマルメロを叱りました。

「おい、ガキ。てめぇの母ちゃんに何て口聞いてんだ?良心ってもんが、てめぇからは感じられねぇ」

マルメロは目を見開き、ふざけた口調で言いました。

「ええ。私には父がいませんからね。確かにリョウシンはいませんわ。いないのだから感じられなくて当然」

男性は、馬鹿にされた事に苛立ち言いました。

「母ちゃんは大切にするもんだ!」

「ふぅ、少しは楽しませて下さるかと思いましたが…。残念ですわ、貴方との会話は楽しくありません」

「そういう話しじゃねぇだろ!頭がイカれすぎて話しが分かんねぇのか!?」

マルメロは飽きてしまい、とどめをさしました。

「今日は、私の誕生日ですの。母親なら、まずは祝いの言葉があっても良いのでは?それなのに、帰ってきたら知らない男に罵られ。しかも、頭がイカれてると言われました。私の14才の祝福の言葉は悲しいものでした」

これには男性も黙ってしまいました。
母親もハッとして、明らかに忘れていた様子です。

マルメロは切なそうな表情を見せ最後に呟きました。

「お母様、ごめんなさい。どうぞ、二人で楽しんでください」

言い終えたマルメロは、家から出ていってしまいました。
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