ペテン死のオーケストラ

幽閉

じめじめと蒸し暑く、薄暗い部屋。

窓はありません。

かび臭く、古ぼけた机と椅子。

マルメロは一人、座っていました。

今は何時なのか?

今日の天気は何か?

朝なのか夜なのか?

何も分かりません。

しかし、マルメロは妙な落ち着きを感じていたのです。

「静かで誰にも邪魔をされない場所」

マルメロは、プチ・ガーデンに似た雰囲気を感じていました。

「私は、どうなるのかしら?」

ぼんやりと考えます。

「1番になりたいと考えていたのに、幽閉されるなんてね」

自分を嘲笑います。

「夢…、叶わなかったな…」

マルメロは諦めを感じていました。

あんなに必死に夢を叶えようとしていたのに、いざ「叶わない」と分かった時、ホッとしたのです。

マルメロにとって、不思議な気持ちでした。

母親が死んで、本当の自分に戻った時に感じた安心感。

それに似ています。

「そもそも、私の夢って何だっけ?」

マルメロは考えます。

1番になる、これは自分が作り上げた夢。

そうではなくて、自然に欲した夢。

幼かった頃、自分は何を求めていたのか思いだそうとしています。

「何だったっけ?」

色々な事が、ありすぎて忘れてしまいました。

ハンノキとの結婚。

王への近づき。

上に行くために必死だった毎日。

母親の日記にもあった「幸せになる」という言葉。

「私にとっての幸せとは?」

マルメロは答えが分かりません。

「きっと、この答えが私の夢なんだわ」

久々に一人になれたマルメロは、ぼんやりと考えます。

幸せになりたくて頑張りました。

でも、今は幸せとは言いにくい状況です。

答えを見つけたくて、誰も訪れない部屋でマルメロは考えるのです。
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