Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
ジルはその隙を見逃さなかった。

素早くジャンの手を両手で掴むと、姿勢を低くして捻りあげる。

ナイフがジャンの手から滑り落ち、体勢を崩す。

すかさず踏み込み、その脇腹を狙って一気に蹴り飛ばした。

防御が間に合わなかったジャンを、数メートル後ろに吹っ飛ばす。


一瞬にして盗賊たちの注目が集まる。

自分から注意が逸れたチャンスをローグも見逃すはずがなかった。

鞘に収めたままのロングソードで、両脇にいた盗賊たちを打つ。

一方はこめかみに、一方は鳩尾を狙い打つと、痛みに怯んだ盗賊から距離を取って構えた。


ジルたちの反撃に、ロイを打っていたニックの手が止まる。

そこへジルは駆け寄ろうとしたが、背後から迫り来るナイフを察知し、身体を仰け反らした。

ジャンが投射したナイフだ。

遠方まで飛ばしたはずなのに、彼はすぐに体勢を整え、ジルに向けて攻撃を仕掛けてきた。


ジルの脳裏にあの馬車が襲われたときのことが思い出された。

舞を舞うかのような滑らかな動きで繰り出される攻撃技。

卓越されたその技は、彼が波の達人ではなかったことを想起させる。


ジャンは投射するナイフでジルを威嚇しながら、立ちはだかった。

あの馬車を襲ったときのように。

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