Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~
しかしその答えは得られなかった。

ニックがまたも胸を押さえて苦しみ出したのである。

先ほどよりも、酷く、激しく。


おい、ニック。
薬をもってこい、早く。
大丈夫か、しっかりしろ。

そんな声が響き、何人かの盗賊が慌てて部屋に駆け込んでくる。

女性が子供を抱き上げ、その場を離れる。

ロイが立ち竦んでいる。


そんな光景をジルは朧げに見ていた。

ジルの意識ももはや限界だった。

ドクンドクンと血流に合わせて疼くように痛む左足。

出血のせいで目も霞んできた。

しっかりと意識を保たねばと思えば思うほど、自分を支える力が抜けていく。

「ジルっ」

ローグの自分を呼ぶ声が聞こえ、手を差し伸べてくれた。

ローグに抱きとめられたのだろうか、頬が石畳にぶつかったのだろうか、よく分からない。

ジルの意識はそこで途切れた。

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