キズだらけのぼくらは
「ねえ、秋穂。秋穂はさ、日本史のレポート書けそう? もう提出、来週じゃん。私、絶対無理ー。でも、出さなかったら高野のヤツ、マジ怒るよねぇ」
ひとりの女子がそう言いだすと、他の女子も調子を合わせてけらけらと笑いだす。
「あんなくだらないレポート、私に書いてる暇なんてあるわけないじゃん。ああ! 誰か、私の代わりに書いてよ。なんか奢るからさ」
すると秋穂は名案を思いついたみたいに大きな声でそう言った。
じゃらじゃらとつけられた重いマスコットたちが、秋穂の動きに合わせて跳ねあがる。
それに比べ取り巻きの女子たちは、揃って顔を青くした。
「マキがやれば……」
「私苦手だもん……。それよりユウの方が」
「いや私だって……」
彼女たちの仲良しグループはやっぱり最高だ。
私はカバンにしがみついて顔を隠しながら、笑いを堪える。
だってそこに、友情の絆なんてものはない。
露呈するのは、意地汚い必死さだけ。
自分が犠牲にならないように、誰かになすりつけ合うんだ。