キズだらけのぼくらは
けれどその瞬間、重みのある何かが床に落っこちた音が聞こえた。
そして、聞き覚えのある弱々しい声までもが聞こえてきた。
「あっ……アキ、落ちたよ……」
私は顔をあげて見たくもない光景を目に映す。
今声をかけるなんて、結愛のバカ……。
秋穂のペンケースについていたマスコットを、しゃがみこんで拾いあげる結愛。
人がよすぎる結愛を、私は見ていられない。
ほら、秋穂が悪魔みたいな笑みを浮かべている。
「ああ、アンタがいたんじゃない。私とまた仲良くしたいんでしょ? だったら、私たち全員分の日本史のレポート書いといてよ」
秋穂は結愛を薄笑いを浮かべて見下ろし、他の女子はコロッと態度を変え秋穂の意見に大賛成の喜びの声をあげる。
結愛はそんな底意地の悪い視線に、ひとりで襲われていた。
他の傍観者たちの視線も結愛へ突き刺さり、教室は凍てつく。
この空間そのものが、結愛の敵になっていた。