キズだらけのぼくらは


驚いて思わず足をピタリと止めるけれど、その席にいる男子は気づく様子もない。

注意深く目を細めて見れば、机に突っ伏して寝ているらしい。

私はなるべく足音をたてないように注意しながら、恐る恐る彼に近づいた。

近付いても彼はぴくりともせず、曲げられた白いワイシャツの背中が上下に動いている。

今回は寝たふりではないのだろうか……。

私はさっき確認したばかりなのに、また窓の外を確かめてしまう。

やはり外は雨。

昼間、脳裏によぎったことを思い出す。

雨の日になにがあるっていうの、本郷大翔は……?

すると、苦しげな唸り声が聞こえてくる。

その声に振り向いた私は、あたふたしながらも屈んで彼の顔を覗き込む。

自分の腕を枕にして横を向いている彼の顔は、深い皺を眉間によせて歪められていた。

瞼はきつく閉じられ、苦しげに眉が動く。

なにかにうなされているみたいに、唸り声は大きくなった。


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