キズだらけのぼくらは


束ねることも忘れられた髪は左右に広がり、結愛を覆い隠している。

長い長い一日だった。

その証拠に、結愛のセータ-の左の袖口は伸びきっている。

リストバンドをも隠すために、一日中引っ張っていたから。

テーブルの反対側には、こんな時にまで本を手にした新太が座っている。

でも、しばらくその手元を見ていても、ページが一向にめくられない。

彼もまた、普通じゃいられないんだ。

それもそうだ。

あんな暴露をされてから、私たちは一度も教室に戻れていない。

ほとんど3人で一緒にいた。

しばらくはあの屋上で過ごし、そのあと人がいない場所を転々として、随分と早く図書室に行きついた。

今日一日が、私たちには悠久のように長かったんだ。

図書室の壁にかけられた丸い時計を何度見たかわからない。

時計は壊れたんじゃないかと思うほど、針が動かないように思えた。


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