キズだらけのぼくらは


自分でも、そんなことを思ってしまったことに笑えてくる。

私はその白球から視線を外し、前を向いて歩きだした。

私とあの白球は、まったく違う。

あの白球は忘れられてしまっただけで、私はそうじゃない……。

こんなカン違いをしたら、あの白球に失礼だ。

なんて思って、ひとり廊下で吹き出した。

“もの”に対してこんなことを思っちゃうなんて、私も終わりだね。

笑いは止められず、きっと顔は笑顔になったまま。

こんな風に笑ったのなんていつぶりかわからない。

ネットをしながら一軍女子を笑ったけど、今みたいに自然に笑えたのは久しぶりだ。

そんなことを思っていたら、やっと自分の教室が見えてきた。

私はさっさと帰ろうと思い、入り口に駆け寄る。

けれど、そこで私は動けなくなった……。


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