キズだらけのぼくらは


教室内にはひとつの人影。

窓側から2列目、うしろから2番目の席。

そこの机の上にこちらへ背を向けて座っているひとりの男子。

逆光でその人はよく見えない。

でも、落ちかけの太陽は教室を力強い光で真横から貫いた。

机もイスも壁も、全てが淡いオレンジに染まる。

そんな一色の世界の中で、ひとつだけ煌めくものがあった。

机に座る彼の、左耳のピアス……。

「……あっ」

思わずもれてしまった声。

私はハッとし、急いで口を塞いだけれど、もう元には戻らない。

私の声と同時に、彼は振り返ったの。

太陽は流れてきた雲に隠れ、タイミングがいいのか悪いのか、光が弱まる。

その時、はっきりと見えた。

本郷大翔の顔が……。


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