キズだらけのぼくらは


咄嗟に振り返って見れば黒い乗用車が猛スピードで、白線をはみ出して走ってくる。

眺めている暇もなく、車はすぐそこまできていた。

「うわっ」

声をあげて私は飛びのく。

白線を踏んで通り過ぎていく車。

地から離れる私の足。

仰け反る体。

私の体は宙に浮いていた。

左足で踏ん張ろうにも思うように足が出ない。

見開いた目に景色が高速で流れていく。

階段の手すりが目の前に見える。

家々の風景がぐわんと向きを変える。

私はかたく目を閉じた。

背中がなにかに衝突して激痛が走る。

あっという間に体は転がり、平らな地面に叩きつけられた。

唸り声をあげながら、目を開けてやっと白い空が映る。

でも、視界はぼやけて、まっ暗になっていった……。


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