キズだらけのぼくらは
私はしばらくその光景を見つめていたけれど、そんな景色はピンボケするようにかすんでいった。
その代わり、私の焦点は窓についた雨粒へと移る。
小さく丸まった雨の粒は、窓の表面にとどまっていた。
それはまるで、一点の曇りもないレンズのように、向こう側を映すの。
木々の濃い緑色も、まっ白な雲の色も、自然がその窮屈なレンズの中におさまっている。
どんなに性能のいいカメラで撮ったものよりも、その色は目が覚めるくらい鮮やかだった。
小さいかもしれないけれど、そのひとしずくには、今この時を生きている自然の姿が映し出され続けているみたい。
それほどに、空から落ちてきたこのしずくは、澄み切っている。
少しの濁りもなく、どこまでも透明で、ありのままの姿を映す……。
だから当然彼らの姿は、しずくの丸みによって歪んで見えた。
きっと私もそう、こんなにも綺麗なしずくに映りこんだら、彼らとまったく同じように歪むんだ。