優しい爪先立ちのしかた
確かに、と心の中で同調する梢。
二人の嶺に対する認識はこんなものである。
「夕方まで街に行ってよう」
「では車をまわして来ます」
「私も一緒に行く」
一緒に? 疑問を持った梢が、栄生の方を向く。万歳の姿勢から、すぐにその身体を抱き上げる。
すっかり板についてきている。
鞄を持った栄生は準備万端で、一緒に車まで歩き始めた。
思えば、父親の姿を見ていないとふと思ってから中庭の向こうに見える両親の部屋の方を見る。しかし、誰も居なかった。
嶺のように今日来る人間の方が多いのだろうか。お手伝いさんは、殆ど出払っていた。
「静かね」
「そうですか? いつもこのくらいだったと思いますけど」