優しい爪先立ちのしかた
うん、と頷いてそれを受け取る。栄生は表面に少し触れて口を開いた。
「ありがとう」
「お礼はおじさんに!」
「でもきっとカナンが居なかったら受け取ってくれなかった」
珍しくしんみりしている栄生を何とも言えない気持ちで見る。カナンは聞こうと思っていたことを思い出した。
「そういえば、推薦受けるの?」
「うん、一応。早めに決まったら色々楽だから。カナンはどこ受けるの?」
あ、と聞き返されて後悔。
これでは自爆だ。
「あたし、実は大学やめて家継ごうかなって…思ってるんだよね」
梢には言ったが、栄生には言っていなかった。
率直な意見がくることは目に見えている。
温め続けた考えがこういう形で知られるとは。