優しい爪先立ちのしかた

きょとんとした栄生は、少しの間考えるように宙を見ていた。

「ご両親、具合悪いの?」

「へ? 全然」

「じゃあ学費は自分で払えとか?」

「そんなこと言われたことないなあ」

のんびりした返事。
ズブズブと、火がかけられた鍋の底へ落ちていくのにも気付かずに。

「じゃあどうして今継ごうと思うの?」

その口調は強かった。

ドキリなんてものではない。ズクリ、だ。
栄生の放った矢は心臓ではなくカナンの脳天を飛ばした。

正論とは時に非情だ。

「別にカナンの人生に口出しするわけじゃないけど。深山コロッケ大好きだから良いけれど。それとカナンの人生の選択肢を減らすこととは話が別だよね?」



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