優しい爪先立ちのしかた
嶺なんて、今頃氷室を継いでいたかもしれない。
梢や尾形に至っては、命の危険にまで晒されたのだ。
反対のポケットから出したライターの火を点けて、バケツの中に落とした。
「誰か、誰か来て……!」
本家を出て、田舎のあの屋敷を貰った後、栄生は死ぬつもりでいた。
木造建築である屋敷に火を放って、自分共々死のうと思っていた。
それを阻止したのは嶺だった。
本家にいた時より会う頻度が多くなった。同情なのか憐れみなのか、何かと世話をしてくれた。
その頃、ゴミをゴミ捨て場に持って行ったところ、そこに寝そべっている男を見つけた。
じゃらり、と肌蹴た柄シャツから覗いたアクセサリーが首輪のように感じた。
「そこ、貴方のベッドじゃないんですけれど?」