優しい爪先立ちのしかた

火に炙られ、水に浸された写真は殆ど複製不可になっていた。

現当主である栄生の父親が問うた。

「栄生、何をした?」

見れば分かるだろうに。
叱り方は昔と変わらないらしい。

栄生はやるべき事はやったので答えるつもりはなかった。

呉葉をソファーに座らせた尾形は、縁側から折りてバケツを覗いた。

「言いたいことがあるなら……」

「縁を切ってくださって構いません。さようなら」

「待ちなさい」

一枚一枚写真を拾う尾形に目もくれずに縁側へ上がった栄生が立ち止まる。

「その言葉を、私が本家から出る時に言ってくれれば良かったのに」







「なんだ、結構な重役出勤だな」

開口一番にそれ。持ってきた和菓子を落としそうになるのを堪え、差し出した。




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