優しい爪先立ちのしかた
二人の足が止まる。軽い気持ちでカナンを送りにきた梢だったが、このまま屋敷に戻るには足が重すぎる。
今日のように、栄生の屋敷を訪ねたカナンを想像する。そこで見たこと、感じたこととは。
尾形、本家に返される、海近くのバス停、大量の血、気を付けろ、
バラバラと散らばるピースをかき集める。しかしそれはうまく噛み合わず、手から零れ落ちるだけ。
「本家に電話をする栄生さんの姿を見た、とか」
「電話してました、確かに。でも、血塗れで、怖い顔してて」
何を言いたいか。
馬鹿な犬でもそこまで聞いたら分かる。
嫌な結論に行きつく。カナンは深々と梢に対して頭を下げた。
「栄生ちゃんを、お願いします」
顔を上げたカナンはニコリと笑って、商店街へ帰っていく。
後ろから見えた足首が細くて、頼りなかった。