優しい爪先立ちのしかた
深山コロッケに行った梢は、閉まっていることを想像できなかった。
そりゃあもう九時を回っている。商店街の居酒屋と、近くの繁華街の灯りばかりが眩しくなる時間帯。
「あれー? 梢さん」
後ろから声がかかった。傘とエナメルバッグを持ったカナンが居た。
「こんばんは、もしかしてコロッケですか? 今開けますね」
「こんばんは、いえ、そういうわけでは無いんです。深山さんは遅くまで部活ですか?」
「部活と、今日は帰り道でご飯食べてきたんです」
栄生とは違い、明るいカナンは梢の近くまで来た。
心のどこかで最近の女子高生は栄生のようにイラついているのかと感じていたので、少しばかり安堵する。
「栄生さんもご一緒でしたか?」