優しい爪先立ちのしかた
不機嫌そうにそう言い放つ。無理もない。梢が出張ってきたおかげで、栄生はストレス解消法が失われた。
大きなベッドに仰向けに倒れ込む栄生。
梢も梢で、変な気が起こる前に早くこの場から立ち退きたかった。
目を瞑る彼女は疲れているように見えて、そのまま眠ってしまいそうだった。
梢はネクタイを緩めて元々開いていたボタンから何個か更に開ける。それから、躊躇いなく栄生の隣に手をついた。
目を開けた栄生が訝しげにそれを見上げる。
「噛みついて良いので、すぐに帰りましょう」
「今は梢の言うこと何も聞きたくない」
「ガキですか」
ガキで結構。キッパリと栄生は言い切った。
面倒なお嬢様だ、と梢はため息を吐く。栄生はゆっくりと手を伸ばして、梢の首元の襟を掴む。