優しい爪先立ちのしかた
がぶり。
野生のライオンが噛み付くように本能的に。
女の力と言えど、小さな歯が立てられるのはそれなりに痛い。気が済むまで力を入れてから離す。
「…容赦ないですね」
「梢がやって良いって言ったんでしょう」
「まあそうですけど」
ゆっくりと梢の首から腕が解かれた。ベッドに背中をつけた栄生は、浅く長く息を吐いた。
「寝るから、五時に起こして」
「今から帰って家で寝た方が良いですよ」
「梢、思春期の息子を持つ母親みたい。口うるさい」
性別を超してしまった。
その言葉に黙り、栄生は満足げにベッドから降りて、洗面所の方へ向かう。
場所が場所だからか、シャワールームと洗面かへ壁はガラス張り。