あなたと私のカネアイ
 お金を持ってる人、お金を使わせてくれる人。
 そうやって選んだはずの円は、こうやって私を愛そうとする。

「今日は帰ろっか? ご両親には、俺が伝えに行くから」
「…………うん」

 私が素直に頷いたのが珍しかったからか、円はクスッと笑って私のおでこにキスを落とした。
 鼻を啜りながら彼を見上げると、円は少し目を細めて「嫌がらないの?」と笑う。

「……うん」

 目を合わせたままは恥ずかしくて、また胸に顔を押し付けて頷いた。

 ――嫌じゃない。

 自然と円の背中に回した手しばらく離せなかったのは……甘えたかったから。
 こんな風に誰かの胸に縋って泣くなんて、久しぶりだ。
 それは、くすぐったいのに安心する不思議な気分だった。
 
 円は私を理解してくれる。
 お金じゃなくて、私のことを一番に考えてくれる。
 愛してくれるんだ――
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