あなたと私のカネアイ
「親だからって、たったそれだけで無条件に感謝しなくちゃいけないの?」

 親と子――どうやっても変えられないそのヒエラルキーに縛られ続ける理由は、一体何だというのだ。
 自分を産んでくれたから? 自分を育ててくれたから?
 だから、何があっても文句を言ってはいけない。言うことを聞かなくちゃいけない。
 感謝できない子供は、親不孝の出来損ない。

「口を開けばお金の話ばっかり。いい成績を取るのは『お金をかけているから当たり前』だし、もっと勉強したいって言えば『またお金がかかる』って文句を言われて……。一体、あの人たちの何に感謝しろって言うの?」

 お金を出してくれたことに感謝しろっていうのなら、「ありがとう」なんて言うくらいなら、今までかかったお金を全部きっちり返す方を選ぶ。

「それを、何も知らないくせに『親には感謝するべき』だのなんだのってイライラするの。お金を使ってする子育てっていうのは、そんなに偉いことなの? どんなことにも勝るものなの?」

 そこまで一気に言うと、私はコーヒーを喉に大量に流し込んだ。
 ミルクが少なめで苦い。

「……愛なんて一時の快楽でできた子供を、命は大切に、なんていう世の中の風潮に合わせて産んだって、こっちは迷惑なだけよ」
「結愛――」
「私、こんな非常識な女なの。円もわかったでしょ? もう放っておいて」
「結愛っ!」

 立ち上がった私の腕を円が引く。
 もう一度ソファに座らされて、彼を見上げると、複雑な表情で私を見る円と視線が合った。
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