あなたと私のカネアイ
 ご飯は食べないわけにもいかないし、なんて心の中で言い訳をしつつ、私も椅子に腰を下ろす。

「結愛の部屋に入ったことなかったから今まで知らなかったよ。別に隠さなくてもいいのに」
「か、隠してたわけじゃない! 私の趣味に口出ししないでって言ったでしょ!」
「口出しじゃなくて、共有したいだけ。ほら、早く食べて」

 早く食べてって言ったって……可愛くて食べられない!
 とりあえず、ハンバーグを一口大に切って食べた。円は相変わらず笑いながら私を見てる。
 自分の気持ちを見透かされてるのが悔しくて、パスタで固定してあったクマの耳を食べるとまた笑われた。

「笑ってないで、円も食べてよ!」

 そう言うと「はい」なんてかしこまった返事をして、円も食事を始めた。
 ときどき私の様子を見ながら手を動かす円は、食べるペースを私に合わせてくれてるのかも。
 少しずつ、周りから食べていたけど、最後にはやっぱりクマの顔が残ってしまう。
 うぅ……

「ふふ。結愛ってば可愛い。また作ってあげるから、ちゃんと残さず食べてごらん」
「こ、子ども扱いしないでよ」

 悔しい。
 でも、嫌じゃない。
 誰に言われたわけでもないけど、この年でクマのぬいぐるみ集めは子供っぽいかなって思ってた。それを、年は関係ないってサラッと受け入れてくれた。
 私の好きなものに理解を示してくれたことにホッとしてる……
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