あなたと私のカネアイ
 食事を終えて、円と一緒に食器を片付けた後は、ソファで一休み。
 この時間もいつのまにか私の日常になった。

「今日はあんまり面白そうな番組ないよ」

 そう言って二人分のコーヒーをテーブルに置いてくれる円との距離は、確実に近づいた。
「そうだね」と相槌を打ってコーヒーを一口飲むと、円もコーヒーを飲む。そういう些細な仕草のシンクロが嫌じゃなくなって……本当に私、変だ。

「ゆーい」

 こうやって、少し子供っぽく私を呼ぶときの円は、キスがしたくて……誘われるように顔を上げると軽く触れる唇にドキドキする。

「コーヒー味」
「いつもそうじゃない」

 フッと笑う円を直視できなくて、私はテレビに視線を戻す。
 円の言うように、つまらない内容――私の嫌いなベタベタな恋愛ドラマに、特に面白くもないバラエティ、ニュースは朝とそんなに変わり映えしないし、政治家の討論にも興味がない。

「うん、そうだね。結愛も慣れてきたみたいだし、結婚式のキスは問題ないかな?」

 円は楽しそうにそう言ったけど、私は結婚式という単語に反応してしまった。それに気づいた円はまた「ゆーい」と言いながら私を抱き寄せる。

「そろそろ話してくれるかなって思ってたんだけど、テディベア作戦でもダメ?」

 円は私の肩に顎を載せて喋るから、首筋に神経が集中してしまう。
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