あなたと私のカネアイ
「だから、合コンで会えたときは必死だったんだよ」
「……そんな風には見えなかったけど」

 どちらかというと、私の方が円のプロポーズを断るのに必死だった気がする。

「でも、それだけで結婚しちゃうなんてどうかしてる」

 そう言って眉根を寄せる私に、円はプッと噴き出して額にキスを落とした。

「それは結愛も同じじゃない?」
「う……」
「でも、結婚とお金っていうキーワードを使ったら、この子は俺に興味を持ってくれるかなって思った。変に取り繕わない、自分に正直だなって印象があったから。今までまごついてた分、せっかくのチャンスは攻めようって思ったんだよ」
「円は変わってる」
「そうかもね? でも、そんな俺のこと……嫌いじゃないでしょ?」

 そう言って円が唇を重ねてくる。
 すぐに舌が入ってくる、深いキス。
 ちゅっ、ちゅっと音を立てられると恥ずかしいのに、私は抵抗できなくて円にしがみつく。

 ――嫌いじゃない。

 だから困ってるのに。どうして円はいとも簡単に私の領域に入ってくるんだろう。

「結愛……」
「っ、ン」

 名前を呼ばれたら、ぞくぞくっと腰に痺れが走った。
 円はそれすらも見透かしたように、私の腰を優しく撫でる。
 カットソーの裾がスカートから抜かれ、その中に侵入してくる熱い手……

「ま、ど……ッ」
「今日は……佳織ちゃんに何を相談したの?」

 唇を離されて問われたことに、ドキッと心臓が跳ねる。

「俺のこと?」

 そんなこと、言わなきゃわからないはずなのに、視線を泳がせてしまった私はバカだ。
 私の無言の肯定を見て、円は私の身体をソファに押し倒した。
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