あなたと私のカネアイ
 対する私は実家暮らしで、家は普通の一軒家。
 社会人になったら家を出ようと思っていたけど、勤めているジュエリーショップの配属先が実家から一番近い場所だったから、結局家を出ずにいる状態だった。
 店舗異動になったら一人暮らしって思ってたけど、結婚するならどっちにしろ家を出られる。
 そんな付加価値までついてくるのなら、結婚も悪くない。
 円さんが両親に向かって真剣に「娘さんを……」なんて言っているのを見ながらそんなことを考えた。

「この子、お金、お金って言うでしょう? 本当にいいのかしら?」

 お母さんが眉を下げて円さんを見てる。
 お父さんは特に喋る様子はない。私の決めたことに文句を言うつもりはないんだろう。
 自分のことは自分で決めて、行動する――それが小さい頃から言われ続けてきた私の責任だから。
 私は自分で円さんと結婚すると決めた。円さんは男として、夫として申し分ない。つまり、反対する理由なんてどこにもない。

「もちろんです。僕は結愛さんの正直なところに惹かれたので。少し意地っ張りなところも可愛らしいですね」

 ニッコリと笑う円さんの顔はどう見てもよそ行き、というか。
 そんな違いに三回目で気づくようになった自分も、それなりに宇宙人の素質があるのかもしれない。
 類は友――伴侶――を呼ぶ。
 なんてね。
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