あなたと私のカネアイ
* * *

 ――それからの円さんの行動は早かった。
 
 私が頷いた次の日には、私を自分の両親に紹介してくれた。
 円さんの実家は思っていたより小さくて少しだけ驚いた。
 大豪邸かと思って期待半分、不安と緊張が入り混じってもう半分だったけど、一般的な家よりは大きいかなという程度でホッとした。
 厳しいご両親だったら――じゃなくても、だと思うけど――、金目当ての女なんて門前払いだろうという考えもあっさり打ち砕かれ、私が来ることを楽しみにしていたらしい物腰の柔らかい二人がご馳走とともに待っていてくれた。
 というより、さすがに円さんも「お金が欲しいから」という部分は省いて私を紹介してくれたわけで。

「可愛らしい娘さんで嬉しいわ。うちには女の子がいないから、特に。ねぇ、あなた」
「ああ。円をよろしくお願いします」

 寄り添って微笑んでくれる円さんのご両親を見ていると、なんだか少し申し訳ない気持ちになる。
 私にだって、自分がありえない結婚をしようとしているという自覚くらいはある。
 なんたって、お金と結婚するようなものなんだから。
 夫となる円さんのこともよく知らないわけだし。

「じゃあ、結愛のご両親にも挨拶に行かなきゃいけないから」

 ああ、そういえば今日は会ったときから名前を呼び捨てにされているな、なんてぼんやり考えた。
 お昼ご飯を食べ終えたところで円さんが席を立ち、片付けをするという私の申し出も笑顔で断られて、私たちは篠沢家を後にした。
< 20 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop