あなたと私のカネアイ
 わからない。
 全然わからないよ。誰か、ちゃんと私にわかるように説明して。

「俺は結愛を愛すよ。いいよね?」

 そう言って、いつもの笑顔に戻った円さんはソファの背もたれに肘をついて、手のひらに頭を乗せた。
 理由? そんなの関係ない。

「私に愛を求めないって――」
「求めないよ。結愛が嫌なら強制しない。でも俺が結愛を愛すことは自由でしょ? 俺の考えは否定しないって条件、呑んでくれたよね?」

 考えを否定してるわけじゃない。
 円さんが一方通行でいいって言うのなら、構わない。
 ただ、私に――

「結愛が嫌がることはしない。ごめんね? さっきのはちょっとした冗談。ただ、俺にはそういうつもりもあるってことはちゃんと言っておいた方がいいと思って。俺も男だし、愛する奥さんと一緒の家に住んでたら手を出したくなる瞬間もあるかもしれないし……男と一緒に住む意味、わからないわけじゃないよね?」

 めちゃくちゃだ。
 でも、条件に頷いたのは私で。ちゃんとその内容を詰めなかった私も悪い。
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