本当はね…。
完全に追い込まれたな…。
どうしたらいいのか、正直わからない。……その時だ。
『千咲‼困った時は上目遣いだからねっ‼』
奇跡に近い。というか、奇跡。
いつか、雛子が言っていた言葉。何の時に言っていたのかは覚えてないが…。このタイミングで思い出すとは…。この際、ヤケクソだ。困ったことに変わりはない。
一か八かだ……。雛子様っ‼
「ユキ先輩…。」
「……ん?」
タイミングを見計らってユキ先輩と目を合わせる。
やるっきゃない……。やれ、私‼
「……ユキ先輩は…どの女の子にも…こういうことするんですか?」
…………。
資料室が一瞬静まり返った。
……え。失敗…?と思ったが…。
私の上からユキ先輩がどいた。
…あれ。…え?成功?
驚きながらユキ先輩を見つめると、ユキ先輩は口元をおさえながら固まっていた。耳が少し赤い気もした。
………?とりあえず、成功ということでいいのかな?
私も立ち上がる。その時。
ーガチャー
…資料室のドアが開いた。
「終わったかぁ、2人とも…って、まだっぽいな。」
声の主は佐々舞尋だ。
「まぁ…この量じゃ終わんねぇよな。俺らも手伝うか…。」
部屋を少し見渡してから一度生徒会室に戻った佐々舞尋は残りの2人の先輩を連れてきた。
………。なんか…。私は誰とも2人っきりになっちゃいけない気がする…。心臓が持ちそうにない…。
「ユキ、顔赤くないか?」
ミサキ先輩が資料室に入ってくるなり、すぐに雪先輩に声をかける。
「何かあったのか?」
ミサキ先輩の言葉にユキ先輩の肩が動いた。…本当にどうしたんだろう。
「ユキ?」
カオル先輩も心配そうにユキ先輩に駆け寄ろうとした。けど。
ユキ先輩が一度深呼吸したように見えた後、すぐに振り返った。
「ん?なんでもないよ?」
…ケロッとしていた…。……なんだ…良かった…。私が失礼なことしちゃったかと思った…。ひとまず安心。…でいいのかな?