優しい手①~戦国:石田三成~【短編集】
はっと目を覚ました謙信は、隣に桃が眠っているのを見て額に浮かんだ汗を拭った。
あまりにも生々しくてとても夢は思えない夢だ。
撫子という女子が桃の前世の姿だった夢をはじめて見たのは、あれはいつの頃だっただろうか――
尾張まで駆けて駆けて、これは絶対に夢ではなく毘沙門天のお告げだと信じて兼続が反対する声も聞かずに駆けて、そして出会った桃。
「…遥か昔から出会っていただなんてね。私が今まで側室も正室も取らなかった理由がなんとなくわかるよ」
撫子はおしとやかで女らしいが、桃は違う。
活発だし口を大きく開けて笑うし、およそ撫子と桃は結びつかない。
だが…桃が撫子の前世の姿だとわかる。
何故だかそう、信じられるのだ。
「んにゃ…?謙信さん…どうしたの?お手洗い行く?」
「いや、違うよ。少し汗をかいただけだから寝ていていいよ」
身体を起こして手の甲で額の汗を拭っていると、桃も目を擦りながらむくりと起き上がって脇に置いていた手拭いで謙信の首や額を拭う。
明日には左近と撫子が運命を共にした村へと着くのだが…
「謙信さん…もしかして撫子と左近さんの夢…見ちゃったの?」
「そうだねえ…見たんだけど夢とは思えなくて飛び起きてしまったよ。桃…あの寺は全焼したはずなんだけれど、跡地に行ってみるよね?」
「うん、もちろん。お墓が建ってるといいなあって思うけど…でも駆け落ちみたいなものだったから無理かな。私たちで弔おうよ」
「そうしようか。ほら桃、こっちにおいで」
ようやく汗の止まった謙信は、桃を抱き寄せて寝転がるとどぎまぎしている桃の頬をむにっと引っ張って鼻を軽くつまんでみせた。
「そうやって照れられるとからかいたくなっちゃうんだけど。せっかく三成の居ない旅なんだから、もう少し私に甘えてくれてもいいんじゃないかなあ」
「え、そ、そう?ちゃんと甘えさせてもらってるよ?美味しいものも沢山食べさせてもらってるし…」
「じゃあ私は桃を食べようかな。……ふふ、その顔!冗談だよ、村に着くまでは我慢するから」
がっかりなそうな、そうでないような――
複雑な心境になった桃は、乳香の良い香りのする謙信の胸に頬を寄せて優しく抱きしめてもらいながら再び眠りに落ちた。
あまりにも生々しくてとても夢は思えない夢だ。
撫子という女子が桃の前世の姿だった夢をはじめて見たのは、あれはいつの頃だっただろうか――
尾張まで駆けて駆けて、これは絶対に夢ではなく毘沙門天のお告げだと信じて兼続が反対する声も聞かずに駆けて、そして出会った桃。
「…遥か昔から出会っていただなんてね。私が今まで側室も正室も取らなかった理由がなんとなくわかるよ」
撫子はおしとやかで女らしいが、桃は違う。
活発だし口を大きく開けて笑うし、およそ撫子と桃は結びつかない。
だが…桃が撫子の前世の姿だとわかる。
何故だかそう、信じられるのだ。
「んにゃ…?謙信さん…どうしたの?お手洗い行く?」
「いや、違うよ。少し汗をかいただけだから寝ていていいよ」
身体を起こして手の甲で額の汗を拭っていると、桃も目を擦りながらむくりと起き上がって脇に置いていた手拭いで謙信の首や額を拭う。
明日には左近と撫子が運命を共にした村へと着くのだが…
「謙信さん…もしかして撫子と左近さんの夢…見ちゃったの?」
「そうだねえ…見たんだけど夢とは思えなくて飛び起きてしまったよ。桃…あの寺は全焼したはずなんだけれど、跡地に行ってみるよね?」
「うん、もちろん。お墓が建ってるといいなあって思うけど…でも駆け落ちみたいなものだったから無理かな。私たちで弔おうよ」
「そうしようか。ほら桃、こっちにおいで」
ようやく汗の止まった謙信は、桃を抱き寄せて寝転がるとどぎまぎしている桃の頬をむにっと引っ張って鼻を軽くつまんでみせた。
「そうやって照れられるとからかいたくなっちゃうんだけど。せっかく三成の居ない旅なんだから、もう少し私に甘えてくれてもいいんじゃないかなあ」
「え、そ、そう?ちゃんと甘えさせてもらってるよ?美味しいものも沢山食べさせてもらってるし…」
「じゃあ私は桃を食べようかな。……ふふ、その顔!冗談だよ、村に着くまでは我慢するから」
がっかりなそうな、そうでないような――
複雑な心境になった桃は、乳香の良い香りのする謙信の胸に頬を寄せて優しく抱きしめてもらいながら再び眠りに落ちた。