優しい手①~戦国:石田三成~【短編集】
その夜は、兼続や幸村、政宗や三成の話に華が咲いた。


謙信の傍には始終誰かが控えているのでふたりきりになれることはあまりない。

またふたりきりだと思っていても実は謙信を守っている隠密が監視していたりで気が休まることはないのだ。

だが謙信はそれを着にすることも無くいつもリラックスしている。

本当に大器の男だと感じていた。


「大体三成は私の秘密の部屋を使って桃と逢引きをしようなんてとんでもない不届き者だよね。誰かに知られたらどうなると思ってるのかな」


「だから誰にも知られないように気を付けてるってば。…本当に誰にもばれてないよね?」


大好きな刺身を頬張りながら一応不安になって問うと、こちらは大好きな酒を呑みながらにっこり笑った謙信は、鯛の刺身を桃の口に入れてやってのんびり。


「例えもし兼続たちに知られたとしても誰が私に逆らえると思う?まあ直接君に害はないだろうけど、三成はどうかなあ。尾張に返されてしまうかもね」


どきっとした桃の表情を見て若干複雑な気分になりつつも謙信は小さな敗北を認めていた。


「そんな顏をしないで。現世では私に出会うよりも先に三成と出会ってしまったんだ。その点においてはしまったな、って思ってるよ。ああ、私も尾張に住んでたらなあ」


「謙信さん…。で、でもこうして出会えたんだしっ。ね?謙信さんこそそんな顏しないで。綺麗な顔が台無しだよ」


桃がそう注意するほどまでに謙信の頬は子供のように膨れていて、つい噴き出した桃は隣の謙信の膝に上り込んで猫撫で声を出してみた。

それに騙される謙信ではなかったが、桃を今独り占めできているのは事実なので気持ちを切り替えて桃の気遣いを受け入れる。


「私が天下でも統一すれば、この不思議な関係は皆に認めてもらえるのかああ」


「!謙信さん…それ兼続さんに言わない方がいいよ?絶対絶対張り切って止められなくなっちゃうから」


「でも“ひとつ願いを叶えて欲しい”って言ってみてさ、天下統一したら…うん、これいい考えだよね。ちょっと本気で考えてみようかな」


にこにこしているのでこの時は本気と取っていなかったが――

後々桃は再び謙信にものすごく驚かされることになる。
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