優しい手①~戦国:石田三成~【短編集】
その夜は、誰かがすすり泣くような声だけが遠くに聞こえていた。
近付いては離れて――その繰り返しで、姿は見えない。
潮騒のように響く鳴き声はせつなさと恋しさに溢れていて、胸が詰まる。
「……も、桃、朝だよ」
「あ……謙信さん…おはよ、なんか夢見ちゃってた…」
肩を揺すられて目が覚めた桃は、謙信に頬を撫でられてそこでようやく泣いていたことに気が付いた。
「どんな夢を見ていたの?また前世の夢かい?」
優しく問いかけてくれた謙信に腕枕をされて安心した桃は、あたたかさに飢えたようにぎゅっと抱き着くと頷いた。
「泣いてたの。ずっと泣いてて…それで悲しくなっちゃって…」
「そっか、もう村が近いから共鳴しているのかもね」
「謙信さんは夢を見なかったの?」
「うーん、私はちょっと眠れなくてあまり寝てないから見てないなあ」
元々睡眠の浅い男だが、いつもとはやはり少し様子が違う。
疲れがとれていないというわけではないのだろうが、謙信の頭をよしよしと撫でた桃は少し驚いた風な謙信の顔に噴き出した。
「私だってたまには優しくなるんだから」
「桃はいつも優しいよ。急にどうしたのかなって思って」
「謙信さんも緊張してるのかなって思って。それに今日は女装するんでしょ?男の人は入れない村なんだよね?」
「そうだねえ、恐らく前世の私たちが原因でそうなってしまったんだろうけれど、完璧に化けないと追い出されるからなあ」
いくら中性的な顔立ちとはいえ、喉仏は出ているし、よくよく見れば手も骨張っていてとても女には見えない。
だが女装した謙信は完璧に女に見えたので、桃はまた謙信の頭を撫でると力強く励ました。
「大丈夫!私より女らしかったから!」
「それ励ましてるの?ふふ、じゃあ完璧を目指して今日は頑張ろうかな」
そして謙信は反物屋の主人を仰天させることに成功した。
近付いては離れて――その繰り返しで、姿は見えない。
潮騒のように響く鳴き声はせつなさと恋しさに溢れていて、胸が詰まる。
「……も、桃、朝だよ」
「あ……謙信さん…おはよ、なんか夢見ちゃってた…」
肩を揺すられて目が覚めた桃は、謙信に頬を撫でられてそこでようやく泣いていたことに気が付いた。
「どんな夢を見ていたの?また前世の夢かい?」
優しく問いかけてくれた謙信に腕枕をされて安心した桃は、あたたかさに飢えたようにぎゅっと抱き着くと頷いた。
「泣いてたの。ずっと泣いてて…それで悲しくなっちゃって…」
「そっか、もう村が近いから共鳴しているのかもね」
「謙信さんは夢を見なかったの?」
「うーん、私はちょっと眠れなくてあまり寝てないから見てないなあ」
元々睡眠の浅い男だが、いつもとはやはり少し様子が違う。
疲れがとれていないというわけではないのだろうが、謙信の頭をよしよしと撫でた桃は少し驚いた風な謙信の顔に噴き出した。
「私だってたまには優しくなるんだから」
「桃はいつも優しいよ。急にどうしたのかなって思って」
「謙信さんも緊張してるのかなって思って。それに今日は女装するんでしょ?男の人は入れない村なんだよね?」
「そうだねえ、恐らく前世の私たちが原因でそうなってしまったんだろうけれど、完璧に化けないと追い出されるからなあ」
いくら中性的な顔立ちとはいえ、喉仏は出ているし、よくよく見れば手も骨張っていてとても女には見えない。
だが女装した謙信は完璧に女に見えたので、桃はまた謙信の頭を撫でると力強く励ました。
「大丈夫!私より女らしかったから!」
「それ励ましてるの?ふふ、じゃあ完璧を目指して今日は頑張ろうかな」
そして謙信は反物屋の主人を仰天させることに成功した。