優しい手①~戦国:石田三成~【短編集】
開いた口が塞がらなくなっていた。

白を基調に、朱色の牡丹が散りばめられた上品な着物と金糸で織られた銀色の帯――

元々肌は白いし女と間違えられることも多い謙信は、どこからどう見ても完璧に女だ。


「なんか負けた気分なのはなんでかな…」


「桃の方が可愛くて綺麗だよ。私は化けただけだから」


にこ、と笑った謙信の首に薄い首巻をぐるぐる巻いた桃は、紅を引いて真っ赤になっている綺麗な唇を見て顔を赤らめた。


「化けただけでも私より断然綺麗なのは確かだもん!謙信さん、絶対ばれちゃ駄目だからね!」


「あまり喋らないようにしておかないといけないから私の代わりに頑張ってね」


声だけはさすがに低くてごまかしようがなく、先ほど少し裏声を使って喋らせてみたのだが、オカマみたいになって断念した。

桃といえば、薄黄色の着物と白い帯で活発そうな印象で、落ち着いた印象の謙信とは逆だ。

男であることを反物屋の主人に口止めさせて輿を呼ばせると、謙信は一緒に乗り込んで桃の手を握った。


「私たちの前世はとても反対された仲を押し切って運命を共にした。だからその後村の者たちに骸を弔ってもらえなかったのかもしれない。墓すらないかもしれない。嘆いてはいけないよ」


「うん、大丈夫。謙信さんこそ悲しくなったらすぐ言ってね。抱きしめてあげるから」


「それは私の役目なんじゃないのかなあ?一泊してから城に戻ろう。あまりゆっくりしているとそろそろ兼続や三成に怒られるからね」


輿がゆっくり進んで行く。

女しか入れない村は戒律が厳しく、輿を運んでくれている男たちはその村の手前で輿を降ろすとその場から離れなければいけないとぼやいていた。


1時間も経った頃に輿が止まると、外から口調の激しい女性の声が聞こえていた。


「輿の中を検めます。我が村は男子禁制ですので」


「謙信さん、絶対喋らないようにね。私に任せて」


桃、張り切る。
< 34 / 38 >

この作品をシェア

pagetop