優しい手①~戦国:石田三成~【短編集】
身ぐるみ剥がされてしまった桃は、現代から持って来ていたバスタオルで身体を隠すと、一目散に大きな檜の浴槽に駆け込んで飛び込んだ。


もちろん謙信の正室となったからには毎夜愛されて満たされた暮らしだったが…今でも裸を見られるのが恥ずかしいし、謙信の裸を見るのも恥ずかしい。

なまじ中性的な顔立ちなので、白い肌だが細く鍛え抜かれた身体を見てしまうと顔がかっかっしてしまう。


「まだ恥ずかしがるなんて桃は可愛いなあ」


「だって!まだ朝なんだもん!全部見えちゃうでしょ!」


「私は朝でも夜でも関係ないよ。いつでも桃に触っていたいんだ」


背中にさざ波のようにお湯がぶつかってきた。

それで謙信が浴槽に入ってきたのだとわかるや否や――いきなり腰を引かれて膝に乗せられると、謙信はにこにこ笑っていた。


「きゃあっ!は、恥ずかしいから見ないで!」


「その手拭いのおかげであんまり見えてないからいいでしょ」


「でも!私には謙信さんのが…その…全部見えるんだもん!」


「じゃあこうしようか。これが妥協案だからね」


ぎゅっと抱きしめられると身体が密着して、固い胸を感じつつ耳元で謙信の息遣いも感じる。

くらくら眩暈がしてしまった桃が謙信の顔を見れずに両手で顔を覆っていると――謙信は桃の顎を細い指でつっとなぞってかすめるように口づけをした。


「前世では私は君に触れることができなかった。…覚えているよね?」


「…うん。私は巫女で…謙信さんは村の地主の長男で…」


「そう。君は毘沙門天に祈りを捧げ、そして身をも捧げる人身御供だった。身体を純血に保ち、男に触れられてはならなかった。君に触れることができたのは…最期の時だけだ」


炎に包まれたお堂の中で、巫女だった桃の告白を聞いて――共に想いを打ち明け合い、共に最期を遂げたあの時の記憶を…今ははっきりと覚えている。


心が震えた桃の頬に涙が伝い、謙信はその涙を唇で吸い取りながら桃の頭を撫でた。


「あの場所が何処だか、ずっと気になっていたんだ。そして私は場所を突き止めた。…桃…一緒に行ってみないかい?私たちが出会った場所でもあり、最期を遂げた場所を」


「謙信さん……。うん…私も行きたい…。連れて行ってくれる?」


「もちろん。ああでも三成は置いて行くよ。いいね?」


桃は頷いた。

謙信は笑って桃の唇を甘噛みした。
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