優しい手①~戦国:石田三成~【短編集】
とても優しげで儚くて、柔和な笑みを浮かべている巫女装束を着た女性がじっとこちらを見ている。
可憐な唇が動いて何事かを喋ったがそれは届かず、桃は彼女に手を差し伸べて問いかけた。
「あなたは…誰?」
「…………」
唇は動いているが、やはり聞こえない。
緋色の袴姿に白衣――
間違いなく巫女…それも前世の自分だ。
「会いに行くから…!待ってて!」
桃の声は届いているのか、巫女はゆっくり頷いた。
そして真っ白な光に吸い込まれるようにして姿を消した。
「…い、桃……おい、起きろ」
「………んぅ…?」
誰かに肩を揺すられて目を開けると、三成がものすごく心配そうな顔をして肩を揺すってきていた。
ここは…謙信から特別に譲り受けた部屋。
家臣や女中が廊下を通ることはほとんどなく、謙信が考え事をしたい時や何か重要なことを決める時に使われている階で、唯一存在する扉には鍵があり、その鍵は謙信しか所持していない。
三成はその鍵を譲り受け、桃との逢瀬をする時に使っていた。
「泣いていた。…どうした?」
「あ…ほんとだ…。なんか…綺麗な女の人が夢に出て来たの。多分…前世の私かも。すっごく綺麗だったよ」
「そうか。…いずれそなたも美しくなる。いや、い、今でも………にやにやするな。こっちを見るな!」
「三成さんの照れ屋さんー。あ、私出発の準備しなきゃ。絶対幸村さんや兼続さんにふたりで旅に出るのを反対されてるはずだから、謙信さんの加勢に行って来るね!」
「時間をずらして行く。先に行け」
にやにやしながら部屋を飛び出した桃は、唯一存在する扉の鍵を開けてそっと辺りの様子を窺うと、謙信の部屋を目指して駆け足で階段を上がる。
そして案の定喧々囂々と兼続や幸村に非難されて唇を尖らせている謙信を見つけて、連れて行けと非難する2人の袖を引いた。
「今回は謙信さんと私だけの旅にしないと駄目なの。だから…お願いします」
「むぅ…桃姫…しかし殿に何かあれば…」
「私に何かあると思っているのかな。心外だなあ、これでも一応本気出すとすごいんだけど」
「わかっておりますが!ぬぅ…どうしたものか」
「大丈夫だってば。さあ桃、準備をしようか」
マイペースな謙信に振り回される家臣たちは一応に深いため息をついた。
可憐な唇が動いて何事かを喋ったがそれは届かず、桃は彼女に手を差し伸べて問いかけた。
「あなたは…誰?」
「…………」
唇は動いているが、やはり聞こえない。
緋色の袴姿に白衣――
間違いなく巫女…それも前世の自分だ。
「会いに行くから…!待ってて!」
桃の声は届いているのか、巫女はゆっくり頷いた。
そして真っ白な光に吸い込まれるようにして姿を消した。
「…い、桃……おい、起きろ」
「………んぅ…?」
誰かに肩を揺すられて目を開けると、三成がものすごく心配そうな顔をして肩を揺すってきていた。
ここは…謙信から特別に譲り受けた部屋。
家臣や女中が廊下を通ることはほとんどなく、謙信が考え事をしたい時や何か重要なことを決める時に使われている階で、唯一存在する扉には鍵があり、その鍵は謙信しか所持していない。
三成はその鍵を譲り受け、桃との逢瀬をする時に使っていた。
「泣いていた。…どうした?」
「あ…ほんとだ…。なんか…綺麗な女の人が夢に出て来たの。多分…前世の私かも。すっごく綺麗だったよ」
「そうか。…いずれそなたも美しくなる。いや、い、今でも………にやにやするな。こっちを見るな!」
「三成さんの照れ屋さんー。あ、私出発の準備しなきゃ。絶対幸村さんや兼続さんにふたりで旅に出るのを反対されてるはずだから、謙信さんの加勢に行って来るね!」
「時間をずらして行く。先に行け」
にやにやしながら部屋を飛び出した桃は、唯一存在する扉の鍵を開けてそっと辺りの様子を窺うと、謙信の部屋を目指して駆け足で階段を上がる。
そして案の定喧々囂々と兼続や幸村に非難されて唇を尖らせている謙信を見つけて、連れて行けと非難する2人の袖を引いた。
「今回は謙信さんと私だけの旅にしないと駄目なの。だから…お願いします」
「むぅ…桃姫…しかし殿に何かあれば…」
「私に何かあると思っているのかな。心外だなあ、これでも一応本気出すとすごいんだけど」
「わかっておりますが!ぬぅ…どうしたものか」
「大丈夫だってば。さあ桃、準備をしようか」
マイペースな謙信に振り回される家臣たちは一応に深いため息をついた。