優しい手①~戦国:石田三成~【短編集】
越後の風はいつも涼しくて心地よく、尻尾をぴんと立ててご機嫌に走るクロを操る謙信の後ろに乗っていた桃は、ほぼ手ぶらといっていい謙信の細い腰に腕を回しながら風に負けないように声を張り上げた。
「謙信さん!その村はどこにあるの?」
「驚いたことに領内にあるんだよ。クロで飛ばせば2日といったところかな」
「へえ、そうなんだね!じゃあどこかに立ち寄って泊まるんだよね?」
「うん、そうだねえ…何も決めてないんだけど、どうにかなるでしょ」
…これがあの越後の龍と謳われた上杉謙信かと思うと、つい噴き出してしまった桃は、乳香の良い香りのする謙信に抱き着きつつ景色を楽しんだ。
越後は美味しいお米が採れるし、何より田んぼが多くて景色がいい。
しかも謙信とふたりきりの旅なんて今までしたことがないし、いつも彼は誰かに囲まれているのでふたりきりになれる時間は実のところあまりなかったりする。
「ふたりきりなんて…今さらだけどなんか照れるね」
「そうだねえ、私は一応お殿様だから仕方のないことなんだけれど、この旅は私がお殿様だっていうのは秘密にしておくんだよ。いいね?」
「うん、だってばれちゃったらパニックになるもんね。秘密にしといた方が絶対いいよ」
「ぱにっく?それは南蛮語だね?どういう意味なのかな?」
――なんとものどかな光景と会話。
ただし謙信はとてつもなく目立つ男なので、道を歩いている旅人などすれ違う人々が大抵謙信から目を離せずに呆けてしまう。
オーラがあり、また秀麗なる美貌も相まってか、すれ違う者が女ならば皆が皆とろけるような顔をしてぽうっとなってしまっていた。
「…謙信さんの女たらし」
「ええ?何もしてないんだけど…。桃こそ男たちがみんな見てるよ。私を嫉妬させてどうするつもりなのかな。今宵私から怖い目に遭わされることになるよ」
「だ、駄目だよお城じゃない場所でそんなこと…」
「何を言ってるの、私たちは夫婦になったんだ。どこで何をしようとも、大声さえ上げなければ大抵は盛り上がっている夫婦だなあと思われるだけで咎められはしないだろうし」
大胆不敵。
ぽかんとしてしまった桃の手をぎゅっと握った謙信は、笑い声を上げて爽やかな風を浴びながら泊まることになる村を目指した。
「謙信さん!その村はどこにあるの?」
「驚いたことに領内にあるんだよ。クロで飛ばせば2日といったところかな」
「へえ、そうなんだね!じゃあどこかに立ち寄って泊まるんだよね?」
「うん、そうだねえ…何も決めてないんだけど、どうにかなるでしょ」
…これがあの越後の龍と謳われた上杉謙信かと思うと、つい噴き出してしまった桃は、乳香の良い香りのする謙信に抱き着きつつ景色を楽しんだ。
越後は美味しいお米が採れるし、何より田んぼが多くて景色がいい。
しかも謙信とふたりきりの旅なんて今までしたことがないし、いつも彼は誰かに囲まれているのでふたりきりになれる時間は実のところあまりなかったりする。
「ふたりきりなんて…今さらだけどなんか照れるね」
「そうだねえ、私は一応お殿様だから仕方のないことなんだけれど、この旅は私がお殿様だっていうのは秘密にしておくんだよ。いいね?」
「うん、だってばれちゃったらパニックになるもんね。秘密にしといた方が絶対いいよ」
「ぱにっく?それは南蛮語だね?どういう意味なのかな?」
――なんとものどかな光景と会話。
ただし謙信はとてつもなく目立つ男なので、道を歩いている旅人などすれ違う人々が大抵謙信から目を離せずに呆けてしまう。
オーラがあり、また秀麗なる美貌も相まってか、すれ違う者が女ならば皆が皆とろけるような顔をしてぽうっとなってしまっていた。
「…謙信さんの女たらし」
「ええ?何もしてないんだけど…。桃こそ男たちがみんな見てるよ。私を嫉妬させてどうするつもりなのかな。今宵私から怖い目に遭わされることになるよ」
「だ、駄目だよお城じゃない場所でそんなこと…」
「何を言ってるの、私たちは夫婦になったんだ。どこで何をしようとも、大声さえ上げなければ大抵は盛り上がっている夫婦だなあと思われるだけで咎められはしないだろうし」
大胆不敵。
ぽかんとしてしまった桃の手をぎゅっと握った謙信は、笑い声を上げて爽やかな風を浴びながら泊まることになる村を目指した。