狂想×Holic
 


「……遅い」
「ごめん」
「……しね、ばか」

付き合い始めて5年目。
同棲を始めて2年目。

今日が何の日か、忘れたなんて言わせない。

「……何してたの」
「仕事。今日までに終わらせないといけないやつがあって」
「……連絡くらいしなよ」
「連絡したら、お前怒るだろ」
「怒るよ」

でも、連絡なしに待たされてる方がよっぽど腹が立つ。

私は今日、頑張って定時で仕事を終わらせたのに。
食材買って、急いで下拵えして、……帰ってきたあんたを、驚かせようと思って。

私だけ、張り切って。


……やっぱり、そうなんだ。


やっぱり、私だけ、好きで。


「……私知ってるよ。この間、女の人と歩いてたでしょ」
「……え?」
「仕事帰りにちらっと見ただけだけど……確かにあんただった。さっきまであの人と一緒にいたの?」
「……仕事してたって言ったろ」

「……嘘つき」


気のせいだと思ってたけど、ほらやっぱり。
女の人と歩いていたことは否定しない。

馬鹿だ。

あんたって本当に、嘘が下手。


 
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