視線の先



昼休み。


ざわつく廊下に出来た人溜まり。



「鈴香ー!はやくー!」


一頻り寝た梨花は元気だ。
私の腕をぐいぐい引っ張ってその輪の中心に入って行く。


「うそー…」


壁に貼ってあった紙に書かれていた候補者の名前。


当選者を示す赤い花は、私の名前の右上に飾ってあった。


「やったじゃん!鈴香会長ー!」


梨花の大声で、周りがあたしの存在に気づき、ざわめきながらも拍手してくれた。


紙の下に書いてあった赤文字。


-当選者は、放課後生徒会室に来るように-


見落としていたこの情報は、副会長の美里亜に教えて貰った。



生徒会室では、前任の先輩からの引き継ぎが一通りあった。
前生徒会長の広瀬さんは、上品で綺麗で賢くてあたしの憧れだった。
そんな広瀬先輩の後任があたし。
そう考えるだけで背筋がピンとなる。


解散したのは、夜の7時だった。


最終下校時間は6時が原則なのにな。


駅まで美里亜と帰ったが家が反対方向だったので、電車は1人で乗り込んだ。


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