視線の先
SiDe=Suzuka=
「ぐぅー…ぐぅー…」
…またか。
日本史の授業中、隣から物凄いイビキが聞こえてくる。
「ちょっと梨花、起きないと当てられるよ!」
小声でがんばって起こしてみる。
「Zzz…Zzzz…Zzzzzz」
全く起きない。
梨花の居眠りは今始まったことではない。
家なんか学校の目の前で、あたしなんかより朝もずっと寝てられるのに、何故か一限目はいつも居眠りをする。
本人曰く、起きて学校にきている記憶がないらしい。
いつも半分寝ながら無意識のうちに登校している…なんて事、信じられない。
「梨花!お、き、ろー!!」
私は消しゴムをこっちを向いて寝ていた梨花の額に命中させた。
「ぐゔぁっ!」
年頃の女の子とは思えない濁音を発し、眉間にシワを寄せる梨花。
眩しいと言わんばかりに目を細め、真っ赤にさせたおでこをさすりながらこっちを向いた。
「ぷっ…やめてよっ…」
梨花の顔がおもしろすぎて、声を押し殺して爆笑する。
いや、押し殺していたつもりだったけど、できてなかったみたい。
「椎名ー!毎度毎度高橋を起こしてくれてんのは助かってるー。しかーし。今始は授業中やぞー。爆笑すんなやー!」
担任のサーセン(沢先生)の言葉に、クラス中がどっと湧いた。
「鈴香ー、起こすなら普通に起こしてよーぉ」
「起こしたよ。そんな事よりも梨花のせいで私も怒られたんだけど。」
べーっと梨花にする。
「あ、ついでにゆうとくわ。椎名、今日生徒会の投票結果でるからちゃんと見に行けやぁ。」
黒板を向いていたサーセンが、振り返ってそう言った。
あ、そういえば今日だっけ。
私は一ヶ月前、サーセンの勧めで生徒会選に出た。
役職は会長。
元々、級長や部長を経験していたので立候補することに抵抗はなかったが、いざ出馬すると他に候補者が3人もいた。
どうせ自分なんかって思ってたから、結果に興味はなかったけど。
ま、行ってみるか。