ハートフル・アーツ
幸大はその空間に驚愕する



「これは…水の中、じゃないよな?」


よくわからない何かが空間に充満しててそれが幸大の触覚を惑わせる


常に全身が何かに触れてる感触



キィーーーン…


まるで耳鳴りのように鳴り響く高音は鼓膜を震わせ幸大の聴覚を断つ

「何なんだよ…ここの空気は…

舌がピリピリする。

それに甘い匂いも…」


舌を刺激する空気、鼻腔をくすぐる芳香は幸大の味覚、嗅覚を遮る


「しかも真っ暗で何も見えねぇ。

見失っちまったか…」


闇(くらがり)が幸大の視覚を塞ぐ


「どこだ…」

ゴンッ!!

幸大は何かに体を当ててしまい転ぶ

「壁に当たったのか?


ちっ…さっさと見つけねぇと…」


幸大が立とうとするが立てない


「何だよ…

床はどこだ?」


幸大は背中に当たっている床さえもわからなくなっている


「マジかよ…」


幸大はその後5時間、立ち上がることは愚か、自分の体さえ触ることが難しかった

自分の腕がどの位置にあるのか…今はうつ伏せなのか、仰向けなのか…

全てが分からない


「床さえも分からない状態で歩いたら…地面をしっかり歩けるわけがない。

多分何かに当たる前に俺は転んで…床にぶつかったんだ。」


幸大が呟く

「感覚を外に向けて外側を感じてるから…この空間に惑わされるんだ。


とは言え感覚を断つなんて芸当は難しいだろうし…


意識を内側に…」


幸大は必死に意識を内側に向けようとするが簡単にできるわけがなかった
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