ハートフル・アーツ

｢さて、修行のヒントをさらに教えようかの？｣

｢え？

こんな駅前で？｣

幸大は帰宅時で混雑している駅前を見ながら言う


｢幸大、この位置でこの雑踏とざわめきの中であそこの募金活動をしている者たちが何の募金をしているかわかるかの？｣

老師が言う

｢いや、そもそも募金活動をしてるかも人混みでわからないし…｣


｢音を聞くんじゃ。｣

｢音を？

募金してる人の声ってことか？｣

｢うむ。


流れを読む修行の時に周囲を読むときはどのようにしたのじゃ？｣

｢えーと…感覚を内側に向けて

余計な感覚を立ってから必要な感覚を徐々に外側に広げてから床の位置や壁の位置。

動く掃除ロボットの音や位置を徐々に感じていって…｣

幸大が言う


｢それと同じじゃ。

まずはこの雑踏や人混みで遮られた視界や聴覚はそのままでは役に立たん。


だからまずはそれを断ち、それから今回は音を聞くのじゃから聴覚にのみ意識を向け、必要のない音を意識から消して聞きたい音だけを聞く。



やってみなさい。｣

老師が言う


｢ふぅ…。｣

幸大が意識を内側にのみ向けた



幸大はその孤独にも近い空間にいる感覚から聴覚だけを外側に解放する


雑踏や人の話し声が音の波のように押し寄せる


｢流流し…｣

幸大は呟くとその音の波を自分の中で流す

余計な音を無意識へと流し…必要な音を意識へと流す

やがて、

意識へと流された音のみを幸大は聞くことができるようになっていく