ハートフル・アーツ
「そんな大したことじゃない。」


幸大が言う

「フィアンセの為、か?」

クリスが言う


「いや…子供の頃はなずなは確かに俺の唯一の友達だったよ。

今みたいな恋愛感情も無かったしな。

今でこそ、なずなには愛情しかないけど…昔は友情だけだったしな。



でも…武神流に思い入れがあったわけじゃない。」


幸大が青く澄み渡る空を見上げた


「俺は…3回、負けたんだ。」


「負けた?」

「ああ。

小さい頃、武神流の動きを少しだけなずなに教わったんだ。


ただ動きを真似しただけで…多分、同級生にも勝てないはずだ。



でも…強くなった気がしてた。」

「その気持ちはわかるさ。」

クリスが言う


「だから、たまたま知り合った子を守ろうとしたんだ。


子供だったからがむしゃらに、相手の強さなんか関係なく飛び込んで…相手は大人だし、多分、戦うことにも慣れてたんだろうな…



時期は違うけど…3人の女の子を守れなかった。


一度負ける度に、次こそは…って思ってさ。



3回負けた時に、もう強さなんか諦めてた。


そして、なずなが家の都合もあって…武神流を教えてくれなくなった。


だから、部屋に籠りがちになって…なずなが勝手に置いてった武神流の書物を見た。


読んださ…何度も。

書いてあることが本当なのかって疑いながらも何回も読み続けて…ついにはほとんどを丸暗記した。


そして、丸暗記した内容を実際に体を動かして確かめた。


そうしたら適当に動くよりも力強く動けた。


だから夢中になって修得したんだ。


次にその3人に会ったときは必ず守れるように…。」
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