ハートフル・アーツ
「結局、どうしたら良いんだ?」


幸大が言う


「さぁ?

僕にも初めてのことだからねぇ…


手っ取り早いのは無意識に力を抑え込んでも真義を使えるほどに力を底上げする。」


「できるのか?」

幸大が言う


「君には無理だろうね、才能がないから。」


「じゃあ…」



「ま、なんとかなるんじゃないかな。」

幸明が笑う


「そんな適当な…」







「なずな、すみれ。」

「お母様、どうかされました?」


すみれが言う


「夏休みになったらあなたたち二人にとある場所で修行をしてもらいます。」

「修行、ですか?」

なずなが言う

「ええ。


舞姫流総本山。


武神流の巫女が必ず修行しなければならない流派です。」

「ではお母様も?」

すみれが言う

「ええ。」



「そうか、そうか。

だったら幸大君も行くといい。」

幸明が言う

「え?」


「君も修行してくるんだ。」

「へ?」


「君は武神流の真義まで辿り着いた。

あとは奥義、天義、真義を鍛練し極めるのみ。


だが、君の才能の無さは僕の武を超えると信じてる!


だから、舞姫流総本山に行ってくるんだ。」

幸明が真剣な顔で言う


「幸明は何を俺に望んでるんだ?」

幸大が言う


「僕はただ、君には何も失ってほしくないだけさ。


無力な人が…非力な人が…

何も失わないようになればいい。


だけど僕にそんな世界は作れない。

だけど…だからこそ…弱くても無力な人でも。

一人くらい全てを守れる人が居ても、いいじゃないか。」


幸明が少し寂しそうに笑った
< 285 / 510 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop