ハートフル・アーツ
「ああ…。」

幸大が言う



「やめときな。


服部一族の当主は『技の拳聖』だ。



ここにいる『心の拳聖』と並ぶ三拳聖の一人だ。」


幸明が言う


「つまり、老師と同じくらい強いのか?」

幸大が言う



「どうじゃろうなぁ?


わしは直接は闘っとらん。


しかし、わしも強いからわし以下じゃろうなぁ…




が…達人クラスではあろうな。」


老師が言う




「…今の俺じゃ手も足も出ないですよね。」


幸大が言う


「さすがに達人クラスでは幸大も勝ち目はないのか…」


なずなが悔しそうに言う


「御姉様…」




「わかりました。」

幸大が言う


「…。」


「老師…とりあえず、そのスピーカーと発信器でわかった服部一族の居場所を教えてください。」


幸大が言う


「な!?

まさか、行く気か!?」

なずなが言う


「あんた、今、わかったって言ったじゃない!!」

すみれが言う





「勝ち目がないのはわかった。


ただ…俺は今まで一度も勝ち目のある戦いをしたことはない。」


幸大が立ち上がる


「幸大…」



「それに…拳を握る意味を見つけたんだ。」




「ほぉ…それは何だい?」


幸明が言う



「今日の去り際、あいつがさよならって言った時に…



あの日と同じくらい悲しそうに泣いてたから。」



「泣く子には勝てない、かな?」

幸明が言う


「そうじゃない。


子供の頃のあの日、強くなると誓ったあの日、そして幸明、あんたが全てを守れる力をくれると言ったあの日に俺は決めたんだ。




今までに守れなくて泣かせた大切な人をまた守れる日が来たなら…絶対に笑顔にしてやる、と。」





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